Saturday, December 14, 2013

The Pros and Cons of Trans Fat トランス脂肪酸の功罪

 トランス脂肪酸(トランスしぼうさん、trans fattrans-unsaturated fatty acidsTFA)は、構造中にトランス型の二重結合を持つ不飽和脂肪酸。トランス型不飽和脂肪酸(トランスがたふほうわしぼうさん)、トランス酸(トランスさん)とも。トランス脂肪酸は、天然の植物油にはほとんど含まれず、水素を付加して硬化した部分硬化油を製造する過程で発生するため、それを原料とするマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングなどに多く含まれる。一定量を摂取するとLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を増加させ心臓疾患のリスクを高めるといわれ、2003年以降、トランス脂肪酸を含む製品の使用を規制する国が増えている(wikipedia)。
 日本の食品には、特に小麦粉ベースのものはほぼすべてと言っていいほど、トランス脂肪酸類の加工品を使っています。
 このトランス脂肪酸が人体への影響について、Wikipediaでは以下のようにまとめられています。なんか、何度読んでも、悪いことが多いようにしか思えません。
摂取に伴うリスクとして指摘されているのは、主として虚血性心疾患(冠動脈の閉塞・狭心症・心筋梗塞)の発症と認知機能の低下である。
WHO / FAOの2003年のレポートで、トランス脂肪酸は心臓疾患のリスク増加との強い関連が報告され、また摂取量は全カロリーの1%未満にするよう勧告されている。
トランス脂肪酸を大量に摂取させた動物実験では血清コレステロールへの影響は少なかった。一方、ヒトでの疫学調査ではリポ蛋白 (Lp-α) が増加する可能性が示唆されている[2]。リポ蛋白はHDLコレステロールの主成分の一つであるが、一部のHDLコレステロール(小粒子HDL)は動脈硬化や心臓疾患のリスクを高めるために有害である可能性が指摘されている。
また中年~老年の健康な女性(43〜69歳、米国)を対象とした疫学調査では、トランス脂肪酸の摂取量が多い群ほど体内で炎症が生じていることを示すCRPなど炎症因子や細胞接着分子が高いことが示された[11]。これについて、研究者は動脈硬化症の原因となる動脈内皮での炎症を誘発している可能性を指摘している。炎症因子についてはアトピーなどのアレルギー症へ悪影響をおよぼす疑いが提示されている。
摂取量が多い場合に、不妊症のリスクが高まる可能性がある
なお、トランス脂肪酸は、通常の脂肪酸と同様、β酸化によって代謝される。2004年のEFSA(欧州食品安全機関)の意見書では、トランス脂肪酸は消化、吸収、代謝経路に関してシス型脂肪酸と同様で、トランス脂肪酸が特に蓄積しやすいということはないと言われている。シス型とトランス型では、トランス型の融点が高くなっている。
かと言って、自分で作らない限り、トランス脂肪酸が使用されていない食品を探すのは至難の業です。日本では、それを制限する動きは全く見られていないからです。
 つまり、少なくとも日本の国民は、トランス脂肪酸の功罪を試す実験台になっているわけです。

 2013年11月8日に、CNNから以下のニュースがありました。
(CNN) 米食品医薬品局(FDA)は7日、マーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸の成分は「一般的に安全とはみなされなくなった」との仮判断を示した。これが公式見解になれば、加工食品への使用は禁止される。
FDAは暫定的な結論として、トランス脂肪酸の主成分である「部分水素化油脂」は安全ではないという認識が一般的になったと判断。パブリックコメント期間を設けて食品業界などの意見を募ったうえで最終結論を出すとした。
期間中に寄せられた意見や情報を検討した上で、これが公式見解となった場合、部分水素化油脂は、食品への利用を原則禁止する添加物に分類される。
FDAのハンバーグ局長は今回の措置について、「トランス脂肪酸の潜在的危険からより多くの米国人を守るための重要な1歩」と位置付ける。FDA当局者も「健康への影響を考えると、できるだけ迅速に対応したい」と表明した。
冷凍ピザやマーガリン、コーヒー用クリームなどに含まれるトランス脂肪酸は、心疾患のリスク増大との関連が指摘されている。主成分の部分水素化油脂は、マーガリンやショートニングなどの固形油脂を製造するために液状の油脂に水素を添加して人工的につくられる。
なお、一部の食肉や乳製品に天然に含まれるトランス脂肪酸は今回の規制対象には含まれない。
米国では加工食品からトランス脂肪酸を締め出す動きが進んでおり、例えばファストフード大手マクドナルドのウェブサイトには、揚げ油にトランス脂肪酸は使われていないと明記している。
米食品業界団体によると、メーカー各社の自主的な取り組みで、食品に使われるトランス脂肪酸は2005年以来、73%以上減ったという。
FDAによると、米国の消費者が1日に摂取するトランス脂肪酸の量は、2003年の4.6グラムから、2012年には約1グラムに減った。しかし「現在の摂取量であっても、健康上の重大な不安が残る」(ハンバーグFDA局長)。トランス脂肪酸は悪玉コレステロールを増加させることが分かっており、摂取しても安全という基準は存在しないと同局長は強調した。
米心臓協会や医学界などもFDAの方針を歓迎し、「トランス脂肪酸を含む食品を食べると心疾患のリスク要因である悪玉コレステロールが増えることは、科学的に実証されている」とコメントしている。
世界保健機関(WHO)も世界で供給される食品からトランス脂肪酸をなくすよう呼びかけている。過去20年でトランス脂肪酸の規制に乗り出した米国やブラジル、デンマーク、韓国などの各国では、効果が実証されているという。
米疾病対策センターの試算によると、人工的に精製されたトランス脂肪酸を含む食品を避ければ、年間1万~2万人の心臓発作が予防でき、冠動脈性心疾患による死者は3000~7000人減少する。



農林水産省に「トランス脂肪酸の摂取と健康への影響」という題目で、以下の情報を開示している(2013年11月11日現在)

国際機関のトランス脂肪酸に関する評価

食事、栄養及び慢性疾患予防に関するWHO/FAO合同専門家会合 (2003)

2002年に開催された「食事、栄養及び慢性疾患予防に関するWHO/FAO合同専門家会合」の報告書(2003)では、肥満、2型糖尿病、心血管疾患(CVD)、がん、歯科疾患、骨粗しょう症に対する食事及び栄養による影響に関する証拠を検証し、それらの疾患を予防するための勧告を行っています。
その中で、トランス脂肪酸については、飽和脂肪酸(ミリスチン酸及びパルミチン酸)、塩分のとりすぎ、過体重、アルコールのとりすぎとともに、心血管疾患(CVD)、特に冠動脈性心疾患(CHD)のリスクを高める確実な証拠があるとされています。
その具体的な証拠としては、次の事項が記載されています。

  • 代謝研究で、トランス脂肪酸は血液中のLDLコレステロールを飽和脂肪酸と同様に増やすだけでなく、HDLコレステロールを減らすため、飽和脂肪酸よりも血液の脂質プロファイルをアテローム性(動脈硬化などの原因となる)に変化させることが示されている。
  • いくつかの大規模コホート研究では、トランス脂肪酸の摂取は冠動脈性心疾患のリスクを増やすことが示されている。

また、食品から摂取するトランス脂肪酸のほとんどは硬化油脂由来である。たとえ世界の多くの地域で消費者向けに販売される油脂やスプレッドでトランス脂肪酸の削減が行われても、揚げ物などのファストフードや焼き菓子などがトランス脂肪酸の主要な摂取源であり、それらからの摂取が増加していると報告されています。
同報告書では、トランス脂肪酸が2型糖尿病のリスクを増加させるかどうかについては、可能性はあるが証拠が不十分であるとされています。

トランス脂肪酸に関するWHOの最新の科学的知見(2009)

WHOは「食事、運動及び健康に関する世界的な戦略」の実践の一つとして、トランス脂肪酸に関する科学的知見の更新を行いました。この中では、トランス脂肪酸を代替することの実行可能性のほか、疫学的及び実験的な見地からのトランス脂肪酸の健康影響についても検討が行われました。2007年に開催された専門家会合で主要論文について評価が行われ、6つの総説が公表されています。
この中で、トランス脂肪酸による健康影響については、次のように結論しています。

  • 対照試験及び観察研究によって、部分水素添加油由来のトランス脂肪酸の摂取が、複数の心血管系疾患発症リスク因子を強め、虚血性心疾患の発症を増やすことが最近の証拠から示されている。
  • 反すう動物由来のトランス脂肪酸は食品から完全に除くことはできないが、それらの摂取はほとんどの集団において少なく、これまで通常の摂取量において虚血性心疾患リスクとの関連を支持する決定的な証拠はない。
  • 部分水素添加油脂に由来するトランス脂肪酸は、健康への便益が無いことが立証され、明確な健康リスクのある、工業的な食品添加物と見なすべきである。
  • 外食事業者や食品製造事業者は、食品製造において工業由来のトランス脂肪酸の使用を避けるべきであり、政府はトランス脂肪酸の代替油脂の支援に踏み出すべきである。
  • 対照試験及び観察研究では、特に、例えばインスリン抵抗性が既にある、内臓脂肪症又は運動不足などの危険因子を抱える個人において、トランス脂肪酸がインスリン抵抗性を悪化させる可能性が示唆されている。


人間栄養における脂肪及び脂肪酸に関するFAO/WHO合同専門家会合 (2010)

2008年に開催された「人間栄養における脂肪及び脂肪酸に関するFAO/WHO合同専門家会合」の暫定報告書(2010)では、「トランス脂肪酸に関するWHOの最新の科学的知見」に基づいて、水素添加油脂由来のC18:1(炭素数が18で炭素-炭素二重結合が一つ)のトランス脂肪酸について、「虚血性心疾患(CHD)の危険因子や虚血性心疾患の発症を増やす、これまで考えられていたよりも確実な証拠がある」、「メタボリックシンドローム関連因子及び糖尿病のリスクに加えて、致死性CHDや心臓性突然死のリスクを増やす、ほぼ確実な証拠がある」として、トランス脂肪酸の摂取量を反すう動物由来のものと工業由来のものを合わせて総エネルギー摂取量の1%未満とする目標値を設定しました。

日本におけるトランス脂肪酸に関する評価

  食品に含まれるトランス脂肪酸に係る食品健康影響評価 (2012)

国内外におけるトランス脂肪酸に関する調査や規制等の状況を踏まえ、我が国においても、食生活の変化により若年層のトランス脂肪酸の摂取が増えていると考えられることから、食品安全委員会は2010年3月にトランス脂肪酸に関し自ら食品健康影響評価を行うことを決定し、2012年3月に評価書を公表しました。評価結果の概要は以下の通りです。また、評価結果の詳細については、食品安全委員会のページをご覧ください。

  • トランス脂肪酸には多くの種類が存在し、個々のトランス脂肪酸について食品健康影響評価を行うには知見が足りないため、トランス脂肪酸全体として評価を行った。
  • 平均的な日本人より多いトランス脂肪酸摂取量を基にした諸外国における研究結果によれば、トランス脂肪酸の摂取により、冠動脈疾患の発症については増加する可能性が高いと考えられた。また、肥満、アレルギー性疾患についても関連が認められたが、その他の疾患については、その関連を結論できなかった。更に、妊産婦、胎児等に対しては健康への影響が考えられた。しかしながら、現時点の平均的な日本人の摂取量において、これらの疾病罹患リスク等と関連があるかは明らかでない。
  • トランス脂肪酸の摂取量について、日本人の大多数がWHO の勧告(目標)基準であるエネルギー比の1%未満であり、また、健康への影響を評価できるレベルを下回っていることから、通常の食生活では健康への影響は小さいと考えられる。しかしながら、脂質に偏った食事をしている個人においては、トランス脂肪酸摂取量のエネルギー比が1%を超えていることがあると考えられるため、留意する必要がある。
  • トランス脂肪酸はヒトに不可欠なものではないことから、できるだけ摂取を少なくすることが望まれる。しかし、脂質は重要な栄養素であることから、脂質全体の摂取バランスにも配慮した、栄養バランスのよい食事を心がけることが必要と考える。
  • 食品中のトランス脂肪酸含有量については、全体として近年減少傾向にあるが、一部製品においては10%を超える製品もあることから、食品事業者においては、引き続き食品中のトランス脂肪酸含有量の低減に努める必要があると考える。
  • リスク管理機関においては、今後とも日本人のトランス脂肪酸の摂取量について注視するとともに、引き続き疾病罹患リスク等に係る知見を収集し、適切な情報を提供することが必要である。
  • なお、食品中のトランス脂肪酸低減に伴い、含有量の増加傾向が認められた飽和脂肪酸については、「日本人の食事摂取基準(2010 年版)」での目標量の上限を超える性・年齢階級があることから、今後とも留意が必要である。 


日本人の食事摂取基準(2010年版)

日本人の食事摂取基準(2010年版)の策定検討会報告書(2009年5月、厚生労働省)には、トランス脂肪酸に関して「他の脂肪酸のように摂取すべき範囲(または許容できる範囲)として表すことが困難な脂肪酸であるため、目標量としての基準策定は行わなかった。」と記載されており、現時点ではトランス脂肪酸の食事摂取基準は設定されていません。しかし、同報告書は「日本人のトランス脂肪酸摂取量(欧米に比較し少ない摂取量)の範囲で疾病罹患のリスクになるかどうかは明らかではない。しかし、欧米での研究では、トランス脂肪酸摂取量は冠動脈疾患、血中CPR値と用量依存性の正の相関が示され、閾値は示されていない。また、日本人の中にも欧米人のトランス脂肪酸摂取量に近い人もいる。このため日本でも工業的に生産されるトランス脂肪酸は、すべての年齢層で、少なく摂取することが望まれる。」とも記載されており、油脂の加工由来のトランス脂肪酸の摂取量を少なくすることが推奨されています。

諸外国のトランス脂肪酸に関する評価

近年、食品中のトランス脂肪酸について何らかのリスク管理措置が必要かどうかを検討するために、いくつかの国や地域でリスク評価が行われ、トランス脂肪酸の健康影響について次のように評価されています。
米国 (2002)

米国食品医薬品庁(FDA)の要請を受けて、全米科学アカデミー医学研究所(IOM)は、トランス脂肪酸の摂取量の上限値を検討するために、トランス脂肪酸の健康への悪影響を検証した報告書を公表しています。
その中で、トランス脂肪酸の摂取と総コレステロール及びLDLコレステロール濃度には直線的な正の相関があり、それゆえ冠動脈性心疾患のリスクを増加させるとしています。
HDLコレステロール濃度に及ぼす影響については、すべての調査研究報告で一貫した結果とはなっていないが、大半は飽和脂肪酸と比較してトランス脂肪酸の摂取がHDLコレステロール濃度を低下させるとしています。
トランス脂肪酸の摂取は、リポタンパク(a)濃度、止血因子、LDL酸化感受性及び血圧に対して、現時点で得られているデータに基づけば、ほとんど影響しないとされています

EU (2004、2010)

欧州食品安全機関(EFSA)の栄養製品・栄養・アレルギーに関する科学パネルは、2004年7月に「食品中のトランス脂肪酸のヒトへの健康影響に関する意見書」をまとめました。この意見書では、トランス脂肪酸による健康への影響を、心血管疾患、糖尿病、がん、初期成長・発達、ぜんそく・アレルギーの5つ観点から考察し、次のように結論づけています。

  • 多くのヒト介入試験で得られた証拠から、トランス脂肪酸を含む食品の摂取は、飽和脂肪酸を含む食品の摂取と同様に、シス型不飽和脂肪酸を含む食品の摂取に比べて、LDLコレステロールを増加させることが示されている。その影響は、直線的な用量反応を示し、トランス脂肪酸の摂取量に比例する。LDLコレステロール濃度の上昇は冠動脈性心疾患の要因となることが示されており、このことからトランス脂肪酸の高摂取は、冠動脈性心疾患(CHD)リスクを増加させる可能性がある。単位量あたりで、トランス脂肪酸が、LDLコレステロールに飽和脂肪酸とは異なる影響を与えるかどうかは、現時点で入手可能なデータからは明確にできない。
  • ヒト介入試験で得られた証拠から、トランス脂肪酸を含む食品の摂取が、飽和脂肪酸、シス型不飽和脂肪酸を含む食品の摂取に比べてHDLコレステロールを減少させることも示されている。この関係は直線的な用量反応を示す。LDLコレステロールとHDLコレステロールの双方に影響を及ぼす結果、トランス脂肪酸は他の脂肪酸と比較してHDLコレステロールに対する総コレステロールの比率を高める。HDLコレステロールが低くなり、HDLコレステロールに対する総コレステロールの比率が増加すると、CVDリスクが増加することが疫学調査から示されている。
  • ヒト介入試験で得られた証拠から、トランス脂肪酸を含む食品の摂取が、飽和脂肪酸、シス型不飽和脂肪酸を含む食品の摂取に比べて空腹時中性脂肪(TAG)濃度を増加させることも示されている。この関係は直線的な用量反応を示す。TAGの増加はCVDリスクと明らかな相関があることが疫学調査から示されている。
  • トランス脂肪酸は、特に高リポタンパク(a)血症のヒトの場合に、リポタンパク(a)を増加させるが、このこととCVDリスクとの関係は明確ではない
  • ヒト介入試験では、トランス脂肪酸が血圧、インビトロでのLDL易酸化性及び止血能に何らかの影響があるというような証拠は得られていない。
  • ヒト研究では、トランス脂肪酸を等カロリーの飽和脂肪酸、オレイン酸又はリノール酸で代替した場合に、現在のEUの摂取レベルで、脂肪酸がインスリン感受性に及ぼす影響が異なるという一貫した証拠は得られていない。
  • ほとんどのヒト介入試験では、水素添加植物油脂に含まれる一価不飽和のトランス脂肪酸で評価が行われた。反芻動物の脂肪由来のトランス脂肪酸による健康影響を評価するためのヒト介入試験は実施されておらず、実際にはそのような研究は現実的ではない。このため、反芻動物由来のトランス脂肪酸と水素添加植物油脂由来のトランス脂肪酸が、LDLコレステロールやHDLコレステロールのような、代謝上のリスク因子に及ぼす影響に違いがあるのかどうか決定することは不可能である。
  • 前向き疫学試験では、トランス脂肪酸の高摂取とCHDリスクの増加の関係について、介入試験から得られている結果を一貫して支持する結果が得られている。トランス脂肪酸と不飽和脂肪酸の影響について調べた前向きコホート研究では、トランス脂肪酸の影響が飽和脂肪酸よりも大きいことが示されている。
  • トランス脂肪酸の摂取とがん、2型糖尿病又はアレルギーとの関係についての疫学的な証拠は、不十分であるか、一貫性がない。
  • 乳幼児の血漿及び組織の脂質中のトランス脂肪酸の含有量は、必須脂肪酸の含有量と逆相関関係にある。組織中のトランス脂肪酸含有量と初期発育の関係については、わずかに限られた数の研究が行われたのみである。これらの研究では因果関係は示されていないが、トランス脂肪酸が胎児及び乳幼児の初期成長・発達に及ぼす影響についてさらなる調査研究が必要である。

さらに、同科学パネルは、2010年3月に「飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、コレステロールを含む脂質における食事摂取参照値に関する科学的意見書」をまとめました。 本意見書では、トランス脂肪酸を含む各脂質について、生成機構、摂取量、身体への影響等に関するデータをもとに、DRVs(Dietary Reference Value、健康な人々の栄養摂取に関する定量的な参照値)の策定について検討され、トランス脂肪酸については以下の通り結論付けられました。

  • トランス脂肪酸は、ヒトの体内で合成されず、また、食生活上必要なものではない。そのため、PRI(Population Reference Intakes、ある集団のほぼ全員にとって十分な摂取量)、AR(Average Requirement、ある集団のうち半分の人にとって十分な摂取量)、AI(Adequate Intake、健常人の集団における平均一日摂取量)は設定しない。
  • トランス脂肪酸の摂取が多いことと冠動脈性心疾患のリスクの上昇の関係性について、一貫性のある知見がある。
  • 必須栄養素を十分に摂取することを妥協せずに、トランス脂肪酸の摂取量を低下させるには限界がある。そのため、パネルはトランス脂肪酸の摂取量は、栄養的に十分な食生活について考慮しつつできるだけ低くすべきと結論付ける。栄養摂取の目標や勧告を策定するときには、トランス脂肪酸の摂取量の制限について検討すべきである。


オーストラリア・ニュージーランド (2007、2009)

オーストラリア・ニュージーランド食品安全庁は、新たなトランス脂肪酸に関する知見を踏まえて、2007年にトランス脂肪酸のレビューを実施し、報告書を発表しました。その中で、トランス脂肪酸による健康影響については、要約すると次のように報告しています。

  • トランス脂肪酸の摂取と健康影響の関係については、論文上で多くの議論が行われている。トランス脂肪酸による健康影響に関連するもっとも一貫性があり、確実な証拠は、血液中の脂質プロファイルに及ぼす悪影響であり、特にトランス脂肪酸がLDLコレステロール濃度を増加させることである。少数のコホート研究では、トランス脂肪酸の摂取と心疾患リスクの関係についても示されている。
  • 反芻(はんすう)動物由来のトランス脂肪酸が、水素添加した植物油脂由来のトランス脂肪酸と比較して、異なる健康影響を示す可能性についても論争が行われている。しかし、反芻動物の脂肪に含まれているトランス脂肪酸の種類は、動物の飼料と関係がある。また、油脂に対する嗜好の違いによって、水素添加油脂に含まれているトランス脂肪酸についても国によって異なる可能性がある。したがって、バターやマーガリンのような複数の脂肪酸の混合物に関する調査研究の比較は、不確かさが大きい。心疾患のリスク因子に対して異なる影響を及ぼすという確実な証拠はなく、飽和脂肪酸の摂取を減らすべきという勧告は、反芻動物由来のトランス脂肪酸を含んでいる動物性脂肪に対しても当てはまるものである。
  • トランス脂肪酸が、等エネルギー量の不飽和脂肪酸と比較して、血中の脂質プロファイルに及ぼす悪影響がより大きいことについては、有力な証拠がある。このことは総エネルギーの2%のトランス脂肪酸と5%の飽和脂肪酸をそれぞれシス型不飽和脂肪酸に替えた場合のCHDリスクの低減効果が、同等であったという前向きコホート研究とも一致するものである。
  • オーストラリア、ニュージーランドのトランス脂肪酸摂取量は総エネルギー摂取量のそれぞれ0.6%、0.7%と少ない。この摂取量は、CHD発症リスクとの関連を示した疫学調査におけるトランス脂肪酸摂取量の分布の下限に相当するため、トランス脂肪酸摂取量が少ない場合にもCHDリスクが増加するかどうかはわからない。
  • 系統的レビューにおいて、トランス脂肪酸の摂取量とLDL:HDLコレステロール比率について、閾値効果を示す証拠は確認されていない。用量反応関係を示す証拠が一貫して得られているのは、トランス脂肪酸のエネルギー摂取比率が少なくとも3%を超える場合である。
  • トランス脂肪酸摂取量が少ない場合において、血中の脂質プロファイルが用量反応的に影響をうけるかどうかは不確かであり、さらに、トランス脂肪酸摂取量が少ない場合においてCHD発症と相関があるのかどうかは不明であるため、オーストラリア、ニュージーランドのすでに低い水準にあるトランス脂肪酸の摂取量を、さらに低減したとしても実際にどの程度の疾病リスクが低減するのか推定することはできない。

このレビューの後、オーストラリア及びニュージーランドでは、規制によらず自主的な取組を進めることにより、トランス脂肪酸の低減を進めています。2009年には、改めてオーストラリア及びニュージーランドでのトランス脂肪酸の摂取量推定及びリスク評価を行うため、また、これまで進めてきた自主的な取組の効果を確認するため、再度レビューが行われました。報告書では、以下のことから、これまでの取組を継続していくと結論づけられています。

  • オーストラリア及びニュージランドともに工業由来のトランス脂肪酸は、2007年以前と比べて自主的な低減が進んだ。
  • オーストラリア及びニュージランドにおける工業由来のトランス脂肪酸の摂取量は、2007年以降25~40%減少し、これは総エネルギー摂取量に対して0.1%の減少に相当する。このことから、現在の規制によらない取組の効果が示された。
  • トランス脂肪酸摂取量の増加と冠動脈性心疾患の関連性が示された一方で、2007年にレビューしたリスク評価書の結論を変えるような追加データはなかった。
  • ISC(政策履行小委員会)による調査とオーストラリア及びニュージーランドのファストフード業界への調査の結果から、食品の供給段階におけるトランス脂肪酸の低減について、現在進めている業界における自主的な取組の効果が示された。
このほか、英国、フランス、カナダなどもトランス脂肪酸のリスク評価を実施しています。

(毎日新聞 2013年11月08日 12時32分のニュース)
トランス脂肪酸:日本で「重要情報で含有表示を」の要望も

 米食品医薬品局(FDA)が7日、「食品に使う上で安全とは認められない」として使用を段階的に禁じる方針を打ち出したトランス脂肪酸。トランス脂肪酸は主にマーガリンやショートニングなどに含まれ、それらを使った菓子パン、ケーキ、ドーナツ、シュークリームなどに多く含まれる。

 内閣府の食品安全委員会によると、日本人の摂取量は1日当たり約0・4〜1・7グラムで、1日摂取エネルギーに占める平均的な割合は世界保健機関(WHO)の勧告基準の1%を下回る。ただし、菓子類を多く食べる30〜40歳代の女性や大学生の中に1%を上回る層があり、食品安全委員会は「日本人の平均的なリスクは低いが、菓子類の食べ過ぎは要注意」と呼びかける。

 一方、消費者庁は、2015年春施行を目指して準備中の「食品表示法」で、加工食品でのトランス脂肪酸の含有量表示を義務付けるかを検討。栄養成分やアレルギー表示などに比べて優先順位が低いとして当面は見送る姿勢だ。ただ、同庁は一部の消費者団体から「健康にとって重要な情報」との声が上がっているため、食品表示法に盛り込むかは引き続き検討課題としている。

危険なトランス脂肪酸、含有量ワースト5のマーガリン!雪印、イオン…セブンは開示拒否によると、トランス脂肪酸の含有量の多いワースト5は以下の通りだった(2015年)。

ワースト1位はマリンフードの「ツキマルゴールド 8g」(6.5%)。同社は給食用の商品が多く、同商品も学校で使われているとみられる。2位は雪印の「バター仕立てのマーガリン140g」(6.0%)、3位はイオンの「トップバリュ キャノーラソフト 紅花 160g」(5.3%)と「テーブルソフト べに花」(5.3%)で同順位、5位は生協の「べに花ハーフ」(4.1%)だった。

【トランス脂肪酸含有量3.0%以上】
・マリンフード「メンドーテルポーション 6g」(4.0%)
・同「ガーリックマーガリン 80g」(3.2%)
・雪印「ネオソフト コクのあるバター風味280g」(3.0%)
・同「テイスティソフト バターの風味 濃厚300g」(3.0%)
・同「ネオソフト キャノーラハーフ160g」(3.0%)
・同「ネオソフト ハーフ」(3.0%)
・同「ネオソフト べに花」(3.0%)
・同「ヘルシーリセッタ ソフト」(3.0%)
・生協「ケーキ用マーガリン」(3.0%)

 これらはパン5~7枚程度で基準値オーバーとなる。

【トランス脂肪酸含有量1.0%以上3%未満】

・ローソン「マーガリン ローソンセレクト」(1.9%)
・イオン「シュガートースト ソフトクリーム」(1.71%)
・雪印「まるでバターのような やわらかソフト(チューブタイプ)140g」(1.4%)
・ホテルオークラエンタープライズ「ホテルオークラ マーガリン180g」(1.0%)
・金谷ホテルベーカリー「金谷ホテルマーガリン」(1.0%)
・J-オイルミルズ「NEW! カルピスソフト」(1.0%)
・同「ラーマ バター好きのためのマーガリン」(1.0%)
・同「ラーマ バターの風味」(1.0%)
・同「ラーマ」(1.0%)
・同「ラーマソフト減塩」(1.0%)
・同「ラーマ プロ・アクティブ」(1.0%)

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