Monday, September 13, 2021

『45歳定年制』?働き改革?


  「『45歳定年制』? 進む、人材の新陳代謝」によると、「サントリーホールディングス新浪剛史社長(政府の経済財政諮問会議議員)はこう提案した」

日本を眠れる獅子のまま終わるわけにいかない、そのためには成長産業への人材移動が必要。企業の新陳代謝を高めるためには、雇用市場は従来モデルから脱却しなくてはいけない。その一環として定年退職の年齢を45歳に引き下げる、個人は会社に頼らない、そういう仕組みが必要だ、と力説した。その上で今の社会では転職のチャンスも十分あるとの見方を示した。

 その狙いは、「先の見通せない時代にはいかに社会をアジャイル化するかだと思う」

 しかし、今の日本の経済状況は果たして「すばやい」や「俊敏な」ことができないからだろうか?「成長産業」なんてあるのか?いくらでも表れてくるか?

 そもそも、今の社会は、ほとんどの人にとっては、働くのは生活の手段である。「働かざる者は食うべからず」の通り、働かないと、生活ができなくなる。

 「個人は社会に頼らない」というが、人間と言うのは集団生活に頼りきるように「進化」してきた。社会がなければ、社会から何らかの労働市場を提供してくれないと、生きていけない。45歳で会社から追い出されてはいいが、その「受け皿」はあるのかは、まったく真面目に考えられていない。

 「制度として“40歳定年”を入れていなくても、実は40代以上を対象とした退職の募集はすでに始まっている。」というが、それは会社の運営の俊敏さより、ただ単に経営が苦しくなったからだけであり、人件費の削減という一番安易な道を選んだに過ぎない。それを根拠に45歳定年制にしたら、生活難の人が増え、自殺者が増えるだけだろう。

 「大企業からベンチャーに移るなど、企業の新陳代謝や人材の流動化を促すために、企業間で連携する仕組みをつくるなどのアイデア」もあり、「50代、60代、70代で起業する人が出てこないと社会保障も持たないとして、シニアの起業を後押しする仕組みづくりにも本気で取り組む必要ある」とも語っているようだ。

 「成功」している経営者はそうは言うが、「流動化」を望んでいる社員はどれだけいるか、起業かつ成功できる人はどれだけいるか、もとより企業した人はどれだけいるかは非常に疑わしい。

 菅政権で提唱してきた「働き改革」と同様、庶民の生活を全く経験していない人たちの幼稚な発想では、庶民のための成果は得られない。

 e-Statの「国民生活基礎調査 / 令和元年国民生活基礎調査 / 所得・貯蓄」によると、日本の2019年の1世帯当たりの平均所得が300万円以下の割合は32.6%である。つまり、ほぼ3分の1の世帯の年間所得は300万未満である。そのような世帯の在職者にとって、転職はどれだけ容易だろうか。40歳で定年させられて、また現状あるいはそれ以上の収入を得られる新たな職は見つけられるだろうか?政治家達自信はそのような心配はないだろうから、机上でわけのわからない理屈に基づいてこのような政策をひねり出す事態は可笑しい話。


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